島風魚雷発射管はなんと、究極の5連装発射管!
当時、駆逐艦島風の側面図がいくつかの図書に掲載されていました。あわせて側面図の資料となるのがプラモデルの島風で、タミヤとピットロードの1/700が有名です。
それらの解説書の側面図と、Wikipediaに掲載されている島風の写真において、ある違和感に気づきました。

ウイキペディアより、引用
当時の島風図面と模型では、5連装魚雷発射管である、零式61cm5連装魚雷発射管が3基搭載されていました。この写真からもわかります。
これを眺めて、先の側面図を見て気が付きました。「1番魚雷発射管の高さが2番と3番より、発射管高さ1基分高い」と気が付いたのです。
写真からわかる、遠近法で1番、2番、3番の高さを線を引いて比較しても、これほどの高低差は出ないはず。と。
そこで、所有している「昭和建造史 別冊 日本海軍艦艇図面集」の島風を見た時に「あ。ウイキペディアの写真とほぼ推測した高さと同じく描かれている!」と気が付いたのです。
当時、これは凄く驚きでした。模型メーカも、出版社もウイキペディアの写真も、さきほど提示した「昭和建造史 別冊 日本海軍艦艇図面集」は所有されている可能性が高いはずです。
なのに?
そこから「昭和建造史 別冊 日本海軍艦艇図面集」の島風とウイキペディアの写真から新たに作図始めました。問題は「零式61cm5連装魚雷発射管」の形状です。艦艇図面集には概略図的な簡素な絵で細かい部分の確認ができません。
そして、タミヤから販売されている、艦艇資料として貴重な「雑記帳」これが決め手となりました。
て、いろいろ紹介してきましたが、これれらの資料から、作図していみました。
特に参考になったのは、日本海軍艦艇図面集の島風公式図と、タミヤの雑記帳に零式61cm5連装魚雷発射管の鳥瞰図イラスト及びウイキペディアの写真を参考に、側面イラストを作図していみました。

ちなみにウイキペディアの写真は呉氏海事歴史資料館図録のシリーズで日本海軍艦艇写真集 駆逐艦にも掲載されています。ただし、実はこの写真版にはもっと、鮮明な写真があって、元の写真には上空に渡り鳥のV字型編隊で飛行する姿がシッカリ映っているのですが。。。なぜか、修正されています。
さて、先のイラストですが、実写真の手摺乾舷側にある落下防止の手摺も確認できることで、およその高さが把握できます。それも上のイラスト右側に「点線」でえがいているのがそれです。
これから、92式61cm4連装魚雷発射管のイラストと、雑記帳のイラストから書き起こしを行いました。
零式魚雷発射管と92式魚雷発射管の比較ですが、発射管その物は同一と考えると、島風の公式図から割り出した横縦の長さはどちらもほぼ、同じサイズのようです。
零式は、楯天板が楯中央部から傾斜しているのが特徴的で、タミヤの雑記帳イラストから、零式のレイアウト構成を割付して作図しました。
(天幕キャンバスを張る、ジャッキステーは省略しています)
なお、この図には、零式横に格子上の点線があります。これは島風の手すりと、零式の位置(高さ)関係を示しています。 この格子の左横にある、「コ」の点線が高さ50~60cm位です。
ちょうどこの分がかさ上げされてるように公式図 日本海軍艦艇図面集 (日本造船学会編 モデルアートの書籍と違います。定価25,000円) 島風図面に描かれています。
公式図に描かれている零式は、1番はどの図面でも共通ですが、2,3番については、発射管と上甲板の間に、50~60cm(最初1mと書いたが、手すりが腰高なのでこの程度かと)程度のかさ上げが行われているような図面になっています。
実は島風のイラストを描いてみると、零式魚雷発射管が高さが低く見えるのです。この理由が零式が上甲板(盛り上がり部分から)に対し、50~60cm(1m)程度のかさ上げを行なっていたイラストに仕上げると、全体的に、スッキリするイラスト=ウイキペディアの写真とイメージが近い事に気が付きました。
これでWikiの島風写真や、駆逐艦総ざらいの島風および、零式魚雷発射管の解説ページに掲載された公試時の島風写真で解る、1番天板と2番および3番魚雷発射管の天板との段差による高低差のイメージに近くなます。
当時、模型のイラストや、図書に描かれていた、1番からみて、2番、3番が低くなっており、ウイキペディアの写真からすると高低差がありすぎる図面になっています。

そこで、2番、3番の魚雷発射管の高さをウイキペディアの写真および、公式図のように1番、2番、3番の高さを合わせた図面を作ってみました。

これで、ウイキペディアの写真と似たイメージに仕上がることが出来ました。
一枚目は、1番と、2番および3番魚雷発射管との高低差が大きく、島風公試時写真の各魚雷発射管の高低差と比較して違和感があります。
二枚目は、下の魚雷発射管を手すり高にかさ上げした(公式図の通りで、50~60cm位?)イラストは1番と、2番および3番魚雷発射管の高低差が小さく、島風の写真と比較も違和感がありません。
さて、ここからが「面白い話」です。当時これを猫工艦サイト 投稿を編集 “駆逐艦「島風」搭載の零式61cm5連装魚雷発射管の側面略図描いてみました。” ‹ ミリタリーグッズ工房「猫・工・艦」 — WordPress
で公開した後、半年くらいたったころ、突然ゲームの影響か島風のリニューアル商品が続々と現れました。もちろんというか、当然というか、この記事で考察された魚雷発射管の高さ、位置で製造されていました。
これ、考察の界隈であるある事らしく、SNSの考察投稿で、作例が登場すると、半年後にその考察通りの商品が出てくることがあります。
そのような楽しみもある世界ですが、現在はすごい勢いで研究されているさまざまな艦艇の形状分析。これらかの発見が楽しみですね。
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